SecuritizeはEthereumをベースに「法令に遵守」した「デジタル証券(セキュリティトークン)」のプラットフォーム。法令を遵守することを支える、証券として必要な「KYC/ALM情報共有」「投票/議決権」などの各種機能を提供する。
SecuritizeはEthereumチェーン上にて法令に遵守したデジタル証券発行を支援するプラットフォーム構築することを目的としたプロジェクト。法令に遵守した証券の発行/取引を実現し、その結果、証券の流動性を高めることを目的とする。DSProtocolといったサービスモジュール群を提供し、証券発行者・投資家・(信頼できる)取引所にそれらサービスを提供する。
0.全体概要
SecuritizeはSecurityTokenのプラットフォームを狙うプロジェクト。SecurityTokenとは法令に遵守した証券をデジタル化し、ブロックチェーンで取引できるようにしたトークン。法令に遵守、というところがミソで、法令に定められた「証券」として振る舞うことが求められる。
だが基本的にパブリックなブロックチェーンにおいては、トークンは、24時間誰にでも送信できるものであり、かつ送信となる対象者はスマートコントラクト で制御されない限り基本的に誰でもよい。誰にでもトークンを送れるため、マネーロンダリングの温床ともなってしまいがちである。
またトークンがただトークンとして存在するだけでは、本来一部の証券に付与される議決権や投票、といった機能やガバナンスは作られない。これらをアナログで実施することは、デジタル化の意味をなさない。
また一度Walletの秘密鍵を無くしてしまえば、再起不能であり、保有していたトークンは消失する。
Securitizeは、KYC/AML(Anti Money Laundering)の確認機能や、トークンの送信先がふさわしい投資家か、それとも認可されていないウォレットかといった確認する機能や、Wallet紛失の救済機能などの機能。スマートコントラクトベースでの投票機能、配当実施機能などを実装し、デジタル証券としてあるべき姿をデジタルネットワーク上に実現するためのプロトコルを提供しようとしている。
1.Securitizeとは何か
SecurityTokenを実現するためのプラットフォーム。Ethereumをベースとしており、Ethereumで書かれるERC20トークンやスマートコントラクトが(米国の)法令に遵守できるように、各種規格やプロトコルを整備している。これにより、証券発行者は法令に遵守した形でセキュリティトークンを発行することができ、投資家はウォレットの紛失に伴う資産消失を回避するといった投資家保護の恩恵にあずかることができ、また取引所は投資家のKYC/AML(anti-money laundering)情報を参照し、トークンを持つべきでない人への送金を防ぐといったことをできるようになる。
・ゴール:「Ethereumチェーン上にて法令に遵守したデジタル証券発行を支援するプラットフォーム構築すること」
・法令に遵守した証券の発行/取引を実現することが目的
・その結果、証券の流動性を高めることを目的とする
2.ソリューション全容
「DSプロトコル」と呼ばれる、セキュリティートークンを実現するためのモジュール群を、証券発行者および取引所、そして投資家の3者に提供する。
そのソリューションである「DSプロトコル」には大きく下記の3つの機能が存在する。
① DS Token
ERC-20を拡張した、トークン送信監査機能付きトークン。
② DS Apps
デジタルトークンが「証券」である事を実現するための各種機能を実現するアプリ群
- - 取引専用DSアプリ
- - 議決権DSアプリ
- - 配当DSアプリ
③ DS Service
①のDSトークンと②DS Appsを支えるためのベース機能。プロトコル。
- ③-A. Trustサービス: 利害関係の異なったステークホルダーのマネージメントを実施する機能
- ③-B. Registryサービス: オンチェーンでの投資家情報の記録
- ③-C. Complianceサービス: 法令に遵守した証券発行をサポートする
- ③-D. Communicationサービス: 各種証券関連イベントを投資家に伝えるサービス
また追加情報として
投資家のUXを向上させるために、オフチェーンAPI(RFE - Ready For Exchange)を開発
このオフチェーンAPIを使うことで取引所が(法令遵守した)デジタル証券のエコシステムの恩恵に預かれるようにしている。(たとえばオンチェーンに存在しないKYC情報を取引所が素早く参照できるなど)
3.個別ソリューション詳細:① DS Token
●ERC20を「継承」する形で実装されるトークン
●ERC20と何が違うか:
➡︎ERC20の転送メソッドである「transfer()」「 transferFrom()」をOverrideし、転送に対して監査を入れる仕組みを作っている
●他に、DS Protocolがウォレットをブロックできるようにする方法の提供や
●他に、Registryサービスを参照し、投資家リストを参照することができるような仕組みを提供
➡︎例えば配当の付与などの各種アクションごとに、投資家リストをチェックし、そのアクションがenableかdisableかを判断できるような機構
●証券発行者は、DSトークンをベースに独自デジタル証券を発行できる。
●DSトークンで発行したスマートコントラクトは、発行者に要求される証券の法令遵守に準拠した機能の恩恵に預かれる
4.個別ソリューション詳細:② DS Apps
・DSトークンの周辺スマートコントラクト群としてDS Appsは提供される
・例えば
・トークンへの議決権(投票)の付与
・配当の発行
・投資金額の返済機能などが付与
・Tokenに付与された証券の権利をトークンに付与させつづけることが可能(ex. 配当や議決権など)
証券として備えるべき機能をスマートコントラクト上で提供すると言ったもの。
5.個別ソリューション詳細:③ DS Service
③-A : DS Service Trustサービス
DS Service Trustサービスとは、利害関係の異なったステークホルダーのマネージメントを実施する機能群。
●証券発行者は一人ではなくにも様々な種類の利害関係者を含んでいる。それらに対して異なる権限を付与できるようにする。
●信頼された取引所に対し、KYCや投資家の認可情報を提供する
●DSAppを通して投資家に対して証券の各種情報(各種通達、イベント事項)を通達する
③-B : DS Service Registryサービス
投資家の情報を保持する機能。プライバシーが保護され、暗号化された情報と保存する。(いわゆるKYC関連情報)
例えば下記のような情報である
●投資目的の国
●投資家のKYCステータス
●投資家認定/資格ステータス
●投資家のKYC有効期限
●投資家認定の有効期限
●投資家向けKYC情報ハッシュ
●投資家認定情報のハッシュ
証券発行者や取引所がこのRegistryサービスを参照し、投資家のWalletと投資家のこれらの情報を紐づけることが可能になる。
なお投資家の情報がなにがしかの登録によって重複して保存されないように、各種バラバラだが中身が同じ投資家を指している情報をマージする機能も備えている。
③-C : Complianceサービス
ERC20のトークンの転送を行うメソッド「transfer()」「transferFrom()」の読み出しごとに、③-BのRegistryサービスに保存されている送信者受信者の情報を参照。
例えば、
●投資家が米国RegulationDやRegulationSに従っているか??
●特定の国の投資家ではないか?
●一定期間に大量の取引をしているか?
などをチェックする
他に、トークン保有者がWalletにアクセスできなかった場合の救済処置(新たにトークンを再発行する)などを備える。
③-D : Comms(Communication)サービス
各種イベントを投資家に伝えるサービス。
流動性の変化のイベントやガバナンス変更のイベントなどを通知する。
6.終わりに
といったように上記にSecuritizeがどういう機能群でSecurityTokenを実現しようとしているかの概要を説明してきた。
より具体的なユースケースに基づいた事例は、ホワイトペーパー内部の下記該当箇所が詳しく説明しているので、詳細を知りたい方はそちらを参照いただきたい。